不良サラリーマン(♂)かつ漏電生活者の日常


by over45
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

ウェブ進化論 終章

ウェブ進化論
梅田 望夫(ちくま新書)

 この本の終章は「脱エスタブリッシュメントへの旅立ち」というタイトルがつけられ、著者の個人的な思いがいろいろ書かれている。でも、この章はなかったほうが良かった。読んでいて辟易とさせられた。

 日本という国は「いったん属した組織を一度も辞めたことのない人たち」たちばかりの発想で支配されている国であるという再発見をした。P.233

 なんでわざわざ再発見なんで仰々しく語るのか分からない。さらに

 日本の大企業経営者、官僚、マスメディア幹部。いわゆるエスタブリッシュメント層の中枢に座る、私よりも年上の人たちの大半が、組織を辞めたという個人的経験を全く持たないのである。そのことが日本の将来デザインに大きな歪みをもたらしてはいないかという懐疑も、私の中に同時に生まれた。

 意味不明。いつ、どういう形でやめたかにもよるでしょう。やめなきゃいけない理由がなければやめないし。またその組織にとどまって頂点に立てることは、それはそれで才能の証。どんな才能かは問わないが。

 それがデザインへ歪をもたらすというのであれば、米国のモデルとは違う、というだけであろう。

 グローバルに活躍する日本人たちに共通する「転職によるいい意味での人生の急展開」「新しい場での新しい出会いがもたらす全く新しいオポチュニティの到来」「組織に依存しない個人を単位としたネットワークがフル稼働することの強靭さ」「いつ失職するかわからない緊張感の中で、常に個としてのスキルを磨き自分を客観的に凝視し続ける姿勢が、いかに個を強くするか」といったキャリア・パラダイムについて、日本のエスタブリッシュメント層の人々は、頭では理解できても、経験に裏打ちされた想像力がまったく働かないのだ。

 一番目の「人生の急展開」については、転職以外にもいくらでもきっかけはある。2番目の「新しい出会い」と3番目の「個人を単位としたネットワーク」は、まったく個人の問題であって組織とは関係のない話。組織に属し続けてもやる人はやる。そのための道具立てがそろってきた、という説明がこの本の大半を占めているのではないか。

 4番目の「個としてのスキルを磨き」というのは、どの企業でも同じ。さぼれば干される、異動させられる。向上心がなく、同じ仕事をしてるだけで満足しているような人はすぐに派遣に置き換えられる。そのほうが安いから。ただ気がついていない人が多いのは事実。でもそういう存在を許しはしない。異動を言い渡されて初めて気がつく人も多いのは確かだが。

 だからこれらをもって「新しいキャリア・パラダイム」などというのはまったく的外れ。

 この著者はただのアメリカかぶれ。この章の冒頭で9.11のことを取り上げ、日本の経営者が9.11について当事者意識を持たないことを批判しているが、日本に限らずアジア・アフリカ、さらには欧州がどういう態度であったかを考えれば明白。個人的な人生の転機にその事件を持ってきて動機付けしただけ。つまらん。

 この章の前までは、それなりに面白かったのだが、一気に冷めた。
[PR]
by over45 | 2006-04-22 17:41 | 読書